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■ 【障がい者(障害者)就職・採用・転職コラム】

2026年10月、UBEの特例子会社「リベルタス興産」に勤務していた元社員が、社長や上司からパワーハラスメントを受けたとして、会社などを提訴したことが報じられました。

 

 

報道によると、原告側は、会社側に相談したものの適切な対応が得られなかったと主張しています。なお、訴えの内容は、現時点で裁判により確定した事実ではありません。

パワーハラスメントの問題は、一般企業でも起こり得ます。この一件だけをもって、特例子会社に特有の問題があると結論づけることはできません。 しかし、障害者雇用を目的として設立された会社で、障害のある社員が経営層や上司からのハラスメントを訴えたという事実は、問題を深く考えるきっかけになると思います。

「障害者の雇用を担う組織は、障害のある人が安心して働ける環境を、本当に整えられているのでしょうか?」 この問いは、特例子会社だけに向けられるものではありません。障害福祉施設における職員から利用者への虐待問題にも、共通する課題があるように思います。

1.問題を「一部の職員の資質」だけで片付けてよいのか
厚生労働省が公表した「令和6年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等」によると、障害福祉施設の職員などによる虐待と判断された事例は1,267件、被虐待者は2,010人に上りました。

 

 

発生要因としては、職員の教育・知識・介護技術の不足、倫理観や理念の欠如、ストレスや感情のコントロールの問題などが挙げられています。もちろん、これらの数字だけで個々の施設の実態を判断することはできません。また、職員による虐待の問題と、企業におけるハラスメントの問題は、法的な枠組みも、当事者間の関係も異なります。それでも、両者から考えるべき共通の課題があります。それは、「障害のある人と関わることを目的とした組織であっても、職員個人の意識や行動に問題があれば、障害者の尊厳や安全が損なわれる可能性がある」ことです。問題を起こした職員の責任を問うことは当然です。しかし、そこで「問題のある職員がいた」という説明だけで終わらせてしまえば、同じ問題が繰り返されるリスクが残ります。

例えば、次のような点です。
・周囲の職員は、問題のある言動に気づく機会がなかったのか。
・管理職は、現場の状況や本人の変化を把握していたのか。
・本人から相談や訴えがあった場合、組織はどのように受け止め、調査し、対応したのか。
・問題を把握していたにもかかわらず、適切な対応が取られなかった可能性はないのか。

こうした点を検証することは、個人の責任を軽くするためではありません。個人への処分や指導にとどまらず、組織として同じ問題を防ぐために必要なことです。個人の責任を問うことと、組織の管理責任を検証することは、どちらか一方を選ぶものでなく、両方が必要です。

2.理念や制度があることと、実際に機能していることは違う

特例子会社には障害者の雇用促進と安定した就労環境の整備が、障害福祉施設には利用者の生活や自立の支援、尊厳の保持が求められます。目的や制度は異なりますが、いずれにも共通する難しさがあります。障害のある人が、上司や支援者との関係で不利な立場に置かれることがある、という点です。職場で不適切な言動を受けても、仕事を失うことを心配して相談できない。福祉施設で不適切な対応を受けても、支援を受けられなくなることを恐れて声を上げられない。自分が受けている扱いに問題があると気づけなかったり、被害をうまく言葉にできなかったりすることもあります。

もちろん、障害のある人が一律に声を上げにくいということではありません。しかし、本人からの申し出だけを問題発見の手段にしてしまうと、組織が問題を把握できないまま、状況が悪化する可能性があります。だからこそ、組織には、本人が声を上げるのを待つだけでなく、問題の兆候を把握し、必要な対応につなげる仕組みが求められます。

ここで重要なのは、マニュアルや相談窓口を設置したかどうかだけではありません。それらが実際に機能し、問題の発見と解決につながっているかどうかです。

<組織が確認すべき4つのポイント>

① 問題を早期に把握できる体制があるか
管理職が現場任せにせず、職員の言動や職場の状況を把握しているか。本人の欠勤や離職、周囲との関係の変化など、問題の兆候に気づく機会があるか。

② 安心して相談でき、相談後に適切な対応が取られるか
相談窓口が形式的なものになっていないか。相談内容が適切に調査され、必要な是正措置につながるか。相談した本人が不利益な扱いや報復を受けない仕組みがあるか。

③ 問題行動に対する指導と、継続的な教育が行われているか
障害特性や合理的配慮、人権尊重について学ぶ機会があるか。不適切な言動があった場合、曖昧な注意で済ませず、必要な指導や再発防止策が実行されているか。

④ 経営層や法人が、現場の管理状況を検証しているか
現場の管理職に任せきりにしていないか。相談件数や離職の状況、発生したトラブルとその対応を把握し、問題があれば管理体制そのものを見直しているか。

これらは、特例子会社にも障害福祉施設にも、それぞれの制度や実情に応じて検討すべきポイントです。すべての問題を未然に防ぐことは、現実には難しいかもしれません。しかし、問題が起きる可能性を前提に、早期発見と適切な対応、再発防止に取り組むことはできます。そして、問題が発生した際には、個人への注意や処分だけで終わらせず、組織の対応に不足がなかったかを振り返る必要があります。

3.「障害者のための組織」という看板は、安心ポイントではない

障害者雇用や障害福祉に関わる組織は、障害のある人を支えるという理念を掲げています。しかし、理念があることと、実際の現場でその理念が実践されていることは別です。

特例子会社であることも、障害福祉施設であることも、それだけで職場や支援の場の安全性が保証されるわけではありません。もちろん、問題が一件起きたからといって、その組織全体が不適切だと決めつけるものでもありません。問うべきは、問題の内容だけでなく、組織がどのように予防し、把握し、対応し、改善したのかということです。適切な体制を整えていても、個人の問題行動を完全に防げないことはあります。重要なのは、問題が起きた際に、組織が事実を確認し、必要な責任を明確にし、再発防止に取り組めるかどうかです。

 

 

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