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■ 【障がい者(障害者)就職・採用・転職コラム】

障害者を「育成して送り出す」ことは、雇用責任を果たしているのか?

10月11日、障害者雇用ビジネス事業者「サンクスラボ」の仲介で、調剤薬局大手アインホールディングス傘下のクラフトに雇用された障害者約50人が、採用からわずか9か月で雇用を終了することになったという新聞記事が掲載されました。

[読売新聞の記事はこちら]

 

就職前には「1年半のキャリア開発プラン」と説明された人もいたようですが、雇用主の方針変更により、当初の見通しや人生設計が変わってしまった障害者が約50人いるとのことです。

契約上の事情や、各社がどのような説明をしていたのかなど、確認すべき点はあります。しかし、この記事を読んで考えたのは、「障害者雇用を外部事業者に任せた場合、雇用主の責任はどこまで果たされているのか?」 ということです。

*外部事業者を利用しても、雇用主の責任は変わらない

今回、障害者を雇用していたのは、さくら薬局グループのクラフト株式会社です。一方、実際の就労管理や育成には、仲介した障害者雇用ビジネス事業者のサンクスラボ株式会社が関わっていたと報じられています。クラフト側は、障害者への対応がサンクスラボ任せになっていた点を認め、改善を約束したともされています。

入社後はサンクスラボのオフィスに通い、自分で決めた資格取得のための学習を続けていたものの、雇用主であるクラフト側との日々のやりとりはなかった、という障害者の話も紹介されていました。

ここで疑問に思うのは、雇用主であるクラフトが、採用した障害者の仕事内容や育成状況、そして雇用継続について、どこまで把握し、責任を持っていたのかということです。

もちろん、外部事業者のサービスを利用すること自体が問題なのではありません。障害者雇用に関する専門的な知識や支援のノウハウを持つ事業者と連携することで、雇用の機会が広がることもあるでしょう。

問題は、採用や日々の就労管理、育成などを外部事業者に任せるなかで、雇用主が本人の働き方や成長、将来の見通しを十分に把握できなくなることです。

雇用に関する実務を外部事業者に委ねることと、雇用主としての責任まで委ねることは、別の話です。

専門的な支援を受けることは、雇用主の責任を軽くする理由にはなりません。本人がどのような仕事をしているのか、必要な支援が提供されているのか、今後どのようなキャリアを築いていくのか。雇用主自身が関心を持ち、状況を把握し、必要な判断を行うことが求められるはずです。

*「育成して送り出す」雇用は、長期雇用と何が違うのか?

新聞記事をみて、もう一つ考えたことがあります。それは、日本HPのシードセンターや、マイクロソフトのITラーニングプログラムなど、障害者の育成やスキル習得を重視した雇用の仕組みです。

こうした取り組みには、ITスキルや職業能力を身につけ、次のキャリアにつなげるという意義があり、大企業の環境で学びながら経験を積むことが、その後の就職に役立つ人もいるでしょう。一般的な採用では就職が難しい人に、新たな機会を提供する可能性もあります。

一方、マイクロソフトのITラーニングプログラムは、最長2年間の契約社員としてITスキルやビジネススキルを学ぶ仕組みであり、修了後の社内継続雇用が保証されているわけではありません。修了後の就職に向けた支援も用意されています。

では、こうした育成型プログラムと、今回、サンクスラボが仲介したクラフトの「1年半のキャリア開発プラン」とは、何が違うのでしょうか。

もちろん、両者を同じものとして扱うつもりはありません。制度の目的や設計、採用時の説明、契約期間、育成内容、修了後の進路支援など、比較するべき点は複数あります。今回のように、当初説明されていた期間より早く雇用が終了するケースと、最初から期間を定めて育成を行う制度は、区別して考える必要があります。

ただ、ここで敢えて、問いたいことがあります。

同じ会社で働く一般雇用の社員には、5年、10年と働き続け、経験を積み、会社の戦力になることを期待する。一方、障害者雇用では、1年あるいは2年のプログラムで学んだら、次の会社へ送り出すことを前提とする。

それは、本当に同じ「社員の雇用」なのでしょうか。

期間限定の育成プログラムが、すべて望ましくないということではありません。本人が希望するキャリアを実現するために、期間を区切って専門的な能力を身につけ、次の職場へ進むことが適切な場合もあります。

重要なのは、期間が限定されていること自体ではなく、その期間に何を身につけてもらい、修了後にどのような仕事へつなげるのか。そして、その仕組みが本人にとって本当に意味のあるものになっているか、という点です。

企業が育成の場を提供するだけでなく、実際に能力が身についたのか、次の就職につながっているのか、本人が納得できるキャリアを築けているのか。その成果を確認し、必要な支援を行うことが欠かせません。

*法定雇用率を達成することが、目的になっていないか?

ここで気になるのは、「障害者雇用の目的」です。育成型プログラムを設けること自体は、前向きな取り組みになり得ます。

しかし、その制度が法定雇用率を達成するための手段として優先され、本人の成長や、その後のキャリア形成が十分に考えられていないとしたら、どうでしょうか。

採用人数を確保する。研修を提供する。資格を取得させる。こうした実績は、いずれも目に見えやすいものです。

しかし、それだけでは、障害者が実際にどのような仕事を経験し、どのような能力を身につけ、その後どのようなキャリアを築けたのかは分かりません。

育成プログラムを用意したことと、雇用主としての責任を果たしたことは、同じではありません。

また、外部事業者を利用する場合も、育成型プログラムを設ける場合も、雇用主として本人の働き方や将来に責任を持つという点は変わらないはずです。

障害者雇用だけが、採用や育成、就労管理を外部に任せることによって、本人と雇用主との関係が希薄になってしまう。それでも法定雇用率を達成していればよい、ということに賛同はできません。

この問題の背景は、雇用の質よりも人数が評価されやすい、制度の構造もあるように思います。

法定雇用率という数値目標は、障害者の雇用機会を広げるうえで重要な役割を果たしています。しかし、雇用人数を確保することが優先されるあまり、雇用された人がどのように働き、成長し、キャリアを築いているかという視点が後回しになっていないか。今一度、考える必要があります。

*障害者雇用を「採用する仕組み」から「働き続ける仕組み」へ

今回のクラフトの問題は、当初の説明と実際の雇用期間が食い違い、入社した障害者の将来設計にも影響したという点で、重大なことです。そして、これは一社の問題で終わらせてよい話でもありません。

外部事業者を利用する場合も、育成型プログラムを設ける場合も、いずれの場合も雇用主の責任は等しくあるにも関わらず、障害者採用や雇用だけは特別扱いになることが多く、それも軽んじられることが多いという問題は、雇用義務を「数」で計ることが原因の一つだと思います。

採用人数を確保したこと、研修を提供したこと、資格を取得させたこと。それだけで、障害者雇用の責任を果たしたと言えるのでしょうか。障害者雇用は、採用して終わりでも、育成して送り出して終わりでもないはずです。法定雇用率を達成するための仕組みを整えるだけでなく、障害者が安心して働き続け、能力を伸ばし、企業の戦力として活躍できる環境をつくる仕組みを真剣に考えたいものです。

 

 

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