■ 【障がい者(障害者)就職・採用・転職コラム】
法定雇用率2.7% 次に議論すべきは「量」ではなく「質」
2026年7月、民間企業の法定雇用率は2.7%へ引き上げられました。
この「2.7%」という数字は、どのように決められているのでしょうか。
障害者雇用促進法第43条では、
「労働者である身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合を基準として政令で定める」と規定されています。
法定雇用率は、就業可能と推計される障害者数と労働者数を基礎として算定される制度です。
しかし、実際の法定雇用率は、単純な計算で決まるものではありません。
<透明性という視点>
厚生労働省は、身体・知的・精神障害者それぞれについて、
各種統計から一般就労が可能と考えられる人数を推計し、
その結果を基に労働政策審議会で議論を行い、
企業への影響なども踏まえた政策判断を経て最終的な法定雇用率を決定しています。
このように、法定雇用率は「統計」と「政策判断」の両方を踏まえて決定される制度です。
ところで、厚生労働省は、
・使用した統計
・推計の考え方
・審議会資料
は公開しています。
一方で、
・身体障害者のうち最終的に何万人を一般就労可能と推計したのか
・知的障害者は何万人なのか
・精神障害者は何万人なのか
という最終的な推計人数は公表していません。
これは「政府が恣意的に決めている」と言いたいわけではありません。
つまり、第三者が同じ計算を再現し、検証できる状態になっているかと言えば、まだ十分とは言えないように感じます。
この制度への信頼をさらに高めるためには、「推計の考え方」だけでなく、「推計結果」まで公開されれば、制度への信頼性はさらに高まるのではないでしょうか。
<このまま法定雇用率は上がり続けるのか>
公開されている統計を基に、アンプティパが独自にシミュレーションすると、労働力人口の減少や一般就労可能な障害者数の推移を考えた場合、法定雇用率をさらに引き上げるほど、企業が追加で雇用しなければならない人数は急速に増えていきます。
概算では、

※公開統計を基に、弊社が独自に試算したデータであり、厚生労働省の公式推計ではありません。
もちろん、働き方の多様化やテレワーク、AIの活用、合理的配慮の充実によって、これまで一般就労が難しかった方の就労機会が広がる可能性は十分あります。一方で、就労を希望しない方や、医療・福祉的支援を必要とする方もいます。 そのため、「法定雇用率は今後も上げ続ければよい」という単純な議論でも、「もう上げるべきではない」という議論でもなく、日本経済と労働市場の実態を踏まえた丁寧な検証が必要だと考えます。
<次に議論すべきなのは「量か、質か」ではない>
障害者雇用がここまで拡大した背景には、法定雇用率制度が果たした役割が確かにあります。「量」がなければ、現在の障害者雇用は実現していなかったことは事実であり否定はしません。しかし、制度開始から半世紀を迎えた今、そろそろ次の段階に進む時期だと思います。それは、「量」か「質」かという二者択一ではありません。「量を維持しながら、質も評価する制度」です。
例えば、
・ 長期定着率
・キャリアアップ率
・昇給・昇格実績
・正社員登用率
・本人の希望に沿った職務への配置
こうした指標も、障害者雇用を評価する仕組みに加えていくことで、企業は「雇用率を満たすこと」だけでなく、「能力を発揮できる職場づくり」にも目を向けるようになると思います。障害者雇用の次のテーマは、「何人雇ったか」ではなく、「その人が安心して働き続け、能力を発揮できているか」。障害者雇用制度が次の50年へ進むために、「量」を積み重ねるだけでなく「質」をどう評価するかという議論を、そろそろ本格的に始める時期ではないでしょうか。
※本コラムは、厚生労働省・JEED等の公開資料を基に分析・考察したものであり、シミュレーション部分はアンプティパ独自の試算です。
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